第二部 炎の国の王カエン

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夜、久しぶりに穏やかな気持ちで眠りについた。 ハオランのことを思うと変わらず不安でたまらないけど、緑の石を見ていると不思議と心が落ち着いた。 城に戻ってから泉の水で石を丁寧に洗い、柔らかな布で何度も拭いた。後日、職人の手で加工してもらうつもりだ。 ベッドに寝転んで、指に挟んだ緑の石を眺めながら様々なことを考える。 ハオランが戻ってきたら、この石を渡して俺の気持ちを伝えよう。俺と一緒に炎の国を守ってほしいと話そう。 ハオランはどんな反応をするだろうか。この世界に戻ってくるということは、俺の傍にいることを望んでくれたからだと思っている。もしも嫌なら戻ってはこない。だから戻ってきた時には、二度と放さない。 そこまで考えて、俺は思わずふ…と笑う。 そうか、父さまもこんな気持ちだったんだな。母さまが可愛くて愛しくて、母さまのことしか考えられなくて。母さまがこの世界から消えてしまった時は、今の俺みたいに不安で心配で苦しかったんだろうな。 俺も苦しいよ。でも母さまが再び父さまのところへ戻ってきたように、ハオランも俺のところへ戻ってくると信じてる。いつになろうと構わない。ずっと待ってるよ。 しかし俺も父さまと同じ、別の世界から来た人を好きになるなんて。血は争えないって、こういうことを言うのか? 指に挟んでいた石をそっと握りしめて目を閉じる。まぶたの裏にハオランの顔が浮かび、早く会いたいと願いながら眠った。 連日ハオランと出会った森に出向いたが、ハオランが戻ってくる様子がない。俺の心が騒がないからまだなのだろう。でも戻ってこないとわかっていても、捜しに行かずにはいられない。 リオが忙しければ一人でも捜しに行った。職務をこなさなければならない日でも、少しでも時間を作って森へ行った。しかしハオランは現れない。 そんな日々を繰り返し、俺の髪が肩の下まで伸びた。
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