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「ずいぶんと凛々しくなられたな、アレン王子」
「ご無沙汰しております。この度は厚かましくも来てしまいまして…」
「そう堅苦しくなるな。俺はアレン王子とは仲良くしたいと思っている」
「え、でも…あなたは王で俺はまだ王ではないから」
「いずれ王になるのだろう?俺達の父上のように仲良くしよう」
「はい!」
アレン王子が大きく返事をして笑う。レオナルト王と同じ青い髪に琥珀色の瞳。顔も整っているから、彼が笑うととても華やかだ。それにかなり背も高い。年下なのに俺よりも高いんじゃないか?
俺はアレン王子の頭からつま先までを観察しながら、椅子に深く腰掛けた。
ここはアレン王子のために準備をした客間だ。近くにアレン王子についてきた側近の部屋もある。側近の名はナジャといって、レオナルト王の側近だった男だ。レオナルト王が炎の国に来た時に、何度か見かけたことがあった。
アレン王子が紅茶を飲みながら、何か言いたそうにこちらを見てくる。
もしかして俺の顔は怖いのだろうかと不安になった。
「アレン王子…正直に話してもらいたいのだけど…。俺って怖い?」
「…え?いえっ、そんなことはありません!」
「ぶふっ!」
俺の後ろに控えていたリオが、口を押さえて吹き出した。
俺は「リオ」と低く囁いて睨みつける。
リオは尚もくくっと笑いながら、目尻の涙を拭う動作をした。
「だから言ったでしょう。最近はアルファム様に似てきたと」
「それは父さまが怖いということだな。わかった、すぐに報告しよう」
「あっ、待って待って!申しわけございませんでした!」
「声が大きい」
「生まれつきですっ」
「ふふっ、あはは!」
俺とリオのやり取りを見ていたアレン王子が、口を開けて笑い出した。
アレン王子の後ろに控えていたナジャも、肩を揺らしている。
「ほらあ、怖いのを通り越して笑われてますよ」
「バカもの、おまえが笑われてるんだ」
「ええっ」
リオが大げさに情けない顔をする。その顔を見て俺も声を上げて笑った。
ナジャが安堵したように笑う。
「お元気そうでよかったです。カナデ様のことで寂しい思いをしてらっしゃるのではないかと、水の国の王も心配してましたよ」
「ありがとう。俺は大丈夫だよ。父さまがまだまだ寂しそうにしてるけど」
「それは仕方ないことです。あれほど大切にされてましたから」
「うん…」
炎の国の人だけじゃなく、母さまのことを忘れないでくれる人がいる。俺はそのことがとても嬉しかった。
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