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「カエン王、何か心当たりはないでしょうか。その男がカナデ様と同じ世界から来た可能性は…」
ナジャがこちらに近づこうとしたのをアレン王子が止める。
「ナジャ、落ち着いて。失礼だよ」
「申しわけありません」
アレン王子に止められてナジャが後ろに下がる。
俺が「大丈夫だ」と笑うと、もう一度「申しわけありません」と言ってナジャが頭を下げた。
「真相を知りたいあまりに失礼な態度をとってしまいました。別の世界から人物が来たことがあるのは炎の国だけですので、つい…」
「気持ちはわかるよ。でも俺は母さまが来た時のことを知らないしなぁ。ハオランが来た瞬間も見てないし」
「ハオランとは…どなた様ですか?」
俺は「あ」と口を押えたけどもう遅い。ハオランのことは再び彼が俺のもとへ戻ってくるまでは、あまり広く知られたくなかった。だけど言ってしまったものは仕方がない。それに水の国のレオナルト王は信用できるし…まあいいか。
視線を感じてそちらを向くと、リオが目を細めて俺を見ていた。無言で見ていた。
俺は「なに?」とリオを睨む。
「カエン様は口が軽いです。うっかり話してはダメじゃないですか。立派になられたと思ってましたけど、まだまだ子供ですねぇ」
「…おまえに言われたくない。だけどまあ、確かに俺は口が軽い。だからリオが父さまがいない所で父さまの悪口を言ってたと話してしまうかもな」
「…え?待って?すいませんでした!カエン様は素晴らしい方です!」
ふん!と顔を背ける俺の腕を、リオが泣きそうな顔で掴む。
俺達の様子を見て「この城は平和ですねぇ」とナジャが感心したように頷いた。
俺はリオの手を外しながら「そうでもないよ」と答える。
「そうなのですか?」
「うん。先ほど名が出たハオランだけど…実は母さまと同じように別の世界から来た人なんだ」
「えっ」
アレン王子とナジャが同時に声を上げた。
まあ…驚くよな。そうそう別の世界から人が来ることなんてないし。でも炎の国には二人来た。いや…ハオランを追いかけて来た人物を入れると三人か…。
「あっ!」
いきなり叫んだために、リオが飛び跳ねた。
かなり驚いたのか胸を押さえて俺を睨んでいる。
というか主を睨むなよ。リオは父さまにはすこぶる従順だけど俺のことは子供扱いしすぎだろ。
「なんですかいきなり…」
「悪かった。思い出したんだけど、水の国に現れた男って、ハオランを狙ってたハオランの国の男かもしれない…」
「そうなのですか?」
俺はハオランから聞いた話を思い返した。
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