第二部 炎の国の王カエン

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父さまが椅子に座ったのを見て、俺は先ほどアレン王子とナジャから聞いた話をした。 父さまは驚いた後に険しい顔になる。そしてアレン王子に「大丈夫か?」と問う。 暗殺されかけたことを聞かれたと思ったアレン王子が、「何度か襲われたことがありますから大丈夫です」と頷く。 「それも心配だが、捕らえた男のことだ。しっかりと拘束し牢から出られぬよう強力な魔法をかけてあるのか?」 「はい。怪しい魔法を使いますから厳重に…。そうだな、ナジャ」 「はい」 今度はナジャが頷いた。ナジャもアレン王子も、父さまの方を向いて、次の言葉を待っている。 でも父さまは、二人から俺に視線を移して「カエン」と呼んだ。 「おまえはアレン王子の話を聞いてどうする?」 「できるならば、その男に会ってみたい。ハオランのことを聞いてみたい」 「ふむ。聞いたとしても、ハオランが戻ってくるとは限らないぞ」 「そうかもしれないけど…。少しでも可能性があるなら俺は何でもやるよ」 「そうか」 父さまが軽く息を吐き出し、かすかに笑う。そして今度こそアレン王子に向き直り、小さく頭を下げた。 「アルファム様っ?何を…」 アレン王子が、慌てて手を前に突き出している。 自身の地位に関係なく、自然と頭を垂れる父さまが好きだ。こんなことができるようになったのも、母さまのおかげらしいけど。母さまは、カナは、本当に偉大だったんだなと、つくづく思う。 父さまは顔を上げると、「カエンを水の国に連れてやってくれないか?」とアレン王子に頼んだ。 「カエンを?それはもちろんいいですけど、王が留守にしても大丈夫なのですか?」 アレン王子が心配そうに俺を見る。彼はいろいろと気配りができて優しい。レオナルト王よりも、優しい性格をしている。 俺が口を開くよりも早く、シアンが「大丈夫です」と頷いた。 「カエン様の代わりにアルファム様が働いてくれます。そうですね?」 「ああ。カエンには予定よりも早く即位させてしまったからな。安心して水の国に行ってこい」 俺は父さまに笑いかけ、アレン王子とナジャにも笑いかけた。 「ありがとう。アレン王子、ナジャ、俺を連れて行ってくれる?」 「もちろん!ぜひ王都を案内したい…と言いたいところなんだけど、男を捕らえている場所は、炎の国との国境に近い小さな城なんだ…ごめん」 俺は父さまと顔を見合せて、ぷぷっと吹き出す。 「なんで謝るの!近いなら日数をかけずに行けていいじゃないか。王都には、落ち着いたらゆっくりと遊びに行かせてもらうよ。こちらこそ、今回はゆっくりと滞在してもらえなくてごめん」 「そんな!今回は遊びに来たわけじゃないからっ。でも次にくる時は、ゆっくりと滞在させてくれる?」 「もちろん。では早速だけど、荷物をまとめたらすぐに出発したい。いいかな」 「わかった」 頷くアレン王子とナジャに挨拶をする。そして父さまとシアンを部屋に残し、準備のためにリオをつれて部屋を出た。
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