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「……ここか」
東京の街の一角、灰色の二階建ての建物。
一階と二階の間の壁に丁寧な文字で『合法殺人東京第二支部』と書かれている。
思っていたよりも地味な外観に夜鷹は肩を透かした。
呼び鈴を鳴らし、鼓動を高ぶらせながら応答を待つ。
「……お! 夜鷹〜、早かったね、今開けに行くよ」
機嫌の良い声が聞こえ、夜鷹は少し苦笑いする。
アンティークなドアが開き、満面の笑みで榊が夜鷹を迎える。
「いやー、ボロくてびっくりしたでしょ? 僕本部の人間に嫌われててさ〜。オンボロ支部貰ったんだよね。ま、十傑の僕が支部で務めてる事自体異常だから嫌われてんだけど」
「そんなことないっすよ。あと、アパートの件有難うございます。家賃も払ってくれるなんて」
夜鷹は深く頭を下げ、感謝の旨を伝えた。
青空の下、まだ未成年の子供が大人に頭を下げる光景は誤解されるので、榊は慌てて夜鷹を支部に入れた。
「これでメンバーは九人か。ホントに若いヤツが多いなこの支部は……あ、他のメンバーは全員任務だよ。好きに寛いでて」
ドアを開くと直線上の廊下、左右両方に二つの扉。
そしてその奥には階段。
どうやら地下の階段もあるようだ。
「二階は事務室、右の部屋は共有スペースとトイレ、左の部屋は治療部屋と会議室。ま、あんまり全員が揃うことは無いかな。遊びに行く時以外」
夜鷹は榊に縦長の紙を渡された。
全て同じフォントの黒文字、それだけで堅苦しい内容だと夜鷹は瞬時に理解した。
「草壁ホテル二階に異犯者……任務ですか?」
「そ。単独任務だからね、くれぐれも死なない様に。嫌なら断ってもいいよ?」
挑発の様な口振りで夜鷹に問いかける。
夜鷹は紙を握りしめ、榊に言った。
「死なねえっすよ、アイツを殺すまでは」
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