第五章 被虐の逆罰

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夜鷹は荒く呼吸をする。 赤いオーラを纏う、地面がビシビシと割れていき、それに呼応するかのように夜鷹は飛び出す。 「正面から来るとは……馬鹿な……なに?」 高速で近付いてからの足を踏ん張り後ろへ回る。 砂が吹き荒れ、不死川の視界は砂で覆われる。 瞬間、不死川は恐怖する。 あの悍ましい突きが当たることを。 「閃光……」 “骸穿黒牟(がいせんこくぼう)” 骨で作った盾で不死川は攻撃を防御する。 それでも伝わる激しい痛み、不死川は歯を食いしばり必死に次の攻撃態勢に移る。 「がしゃ髑髏、行け」 手から巨大な髑髏を生み出し、夜鷹に襲い掛かる。 動きは単純、しかしパワーだけは抜群に高い。 「潜在能力30% 脚力!!」 夜鷹は真上に飛び、回し蹴りで髑髏の頭を攻撃する。 しかしダメージはないのか、すぐに体勢を立て直し夜鷹に攻撃する。 夜鷹は今空中、つまり身動きが取れない。 前からがしゃ髑髏、後ろからは不死川が攻撃態勢になっていた。 「やっべ」 夜鷹は避けることが出来ないと判断し、防御体勢に移る。 「馬鹿め……」 “禊骸白憑(けいがいはくひょう)” がしゃ髑髏のパンチと不死川の渾身の技が夜鷹に炸裂する。 夜鷹は白目を剥き、一瞬気絶する。 地面に叩きつけられ、あまりの痛みに悶絶する。 「止まんねえよ、俺は」 ヨロヨロと立ち上がり、弱々しいオーラを纏う。 夜鷹はもう限界だった。 勇ましい赤いオーラも薄く弱々しいオーラとなっている、不死川も限界だと気付いていた。 「終わりだ、夜鷹朝陽」 瞬間、夜鷹の頭に走馬灯が走る。 様々な戦い、残酷な現場、悲しい思い出。 笑いあった日々。 夜鷹の拳は動いていた。 それは黒いオーラを纏った恐ろしいパンチ。 殺意を全て不死川に向けられた、まさに圧巻のパンチ。 「極拳(フィストマーダー)」 不死川は粉々に弾け飛ぶ。 それ以外には一切なんのダメージもなく、遊具も住宅街も一切壊れていなかった。 夜鷹はその場に気絶した。 何故このレベルの突きが撃てたのかは聞くまでもない。 呪縛だ。 無意識のうちに呪縛を自分にかけたのだ。 今際の際、夜鷹の思考はこの言葉でいっぱいだった。 『俺の全てをやる、だから最強の一撃を』 朱雀を倒すという使命をも投げうって繰り出したパンチ。 そのリスクは半端なものではなく、夜鷹がもう“二度と”目覚められないくらいには、強力な呪縛だった。
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