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夜鷹の異能、身体能力操作。
自身が纏うオーラ(身体能力強化ができる)を振り分けながら戦う。
覇壊拳は、拳に全オーラを込めてパンチをするという単純な技である。
単純な様で操作がかなり難しい、それでいて応用が効く異能である。
「すごいな君は。恐らく未成年だろう?」
真後ろから、やや高めの声で耳に囁かれた。
明らかに危険な状況、夜鷹は動けなかった。
「ああ、そう緊張しないで。私は君を殺す気は無い」
夜鷹も分かっていた。
相手が自分より強いことを。
それもちょっとの差じゃない。
雲泥の差、月とすっぽん、夜鷹は服従するしかなかったのだ。
「私の仲間にならないか勧誘しようと思ってね。君の力は“合法殺人者鏖殺”に必要だ」
「……やらないと言ったら?」
夜鷹がそう問いた瞬間、恐ろしい殺気が背中に当たるのを感じた。
今まで感じた事の無い、トラウマになるレベルの恐怖。
夜鷹の体は震え、汗は尋常ではない程に流れていた。
「今ので分かったでしょ?」
殺気を放ちながらも変わらない声のトーン、夜鷹は目を瞑り、覚悟を決めた。
「嫌だ、俺はお前が嫌いだ」
後ろを振り向くとそこには、軽蔑する様に夜鷹を見ている男の姿があった。
和服姿の黒髪長髪、手には怪しい箱を持っていた。
良い状況ではない事は確かだった。
「……残念だよ、君は良い仲間になると思ってたのに」
涙を流しながら夜鷹に向かって手を開く。
「式神創生・壱『艮』」
瞬間、箱の中から黒い渦が出来、そこから異形の生物が飛び出した。
頭は牛、体は虎の薄気味悪いキメラ。
夜鷹は臨戦態勢になり、戦う覚悟を決めた。
「よし、来……い!!?」
あまりに一瞬だった。
夜鷹の目ですら追えないスピードで背後に回り、腕を折ったのだ。
夜鷹自身、腕を折るのは初めてだった。
そもそも痛みを感じることすら、あまりない。
故に、悶えた。
「うああああ!!?」
思考は混乱していた。
何故殺さなかったのか、そもそもこの生物はなんなのか、そしてあの男の目的はなんなのか。
「もう一度チャンスをあげよう。服従するか、死ぬか」
「……どっちもごめんだよ!!」
「艮、殺れ」
艮が夜鷹の首を折ろうとした瞬間、鉄コンクリートの壁を突き破って男が出てきた。
白髪の長身、榊だった。
二人とも唖然とした表情で榊を見つめた。
日差しが差し込む薄暗いホテル、それはまさに希望の光だった。
「……へえ、驚いた。花道智、会いたくなかったね」
「……龍禅、君か」
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