愛の血

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麻里奈は力が抜けて、その場に力尽きる様に座り込んだ。 赤水先生は、歓喜と不安と言う相対する2つの感情が、心を巡っていた。 死体を観察した後、馬鹿にしたように皆に聞いた。 「この、死体、食べます?」 梨理香が目を逸らし、答えた。 「食べない。」 断られると、次は美穂の方に視線を向け、答えを欲しそうに見つめた。 「う〜ん!食べない…よ」 死体の前で、ふざけ合う2人を麻里奈は、いつかこの2人を殺す日が来る、そう心に決めていた。 麻里奈は、横にいる梨理香をチラチラと見ていた。 梨理香なら、楽しそうに拷問をしそうなのに意外にも、心を痛めている様に見えた。 赤水先生は、むせかえる様な死臭に、血生臭い匂いに耐えられなくなったのか、口を塞ぎ込んだ。 「あ、貴方達、そろそろ戻らないと他の生徒達が不審に思うわよ。」 麻里奈は、一足先に教室から出た。 そして、皆で教室に向かった。 教室に着くまでやけに時間が長く感じた。 やはり長い間、人が殺された場所に行くと、強がっても、死体の悪臭に耐えられなくなる。 逆に、死臭を気にしていない人は、嗅ぎ慣れているせいか、美穂や由里は、平気だった。 そう言う意味では、赤水先生や梨理香と翼は根っからの犯罪者ではないと思った。 自分でも、普通じゃないと思う。 どれだけの憎しみがあり、壊れてしまっても人の心が最後に蓋をする。 その蓋をなくして仕舞えば、いずれ死死森霊子の様になってしまうんだろうか? 私は、例え最後に復讐を果たせたとしても、人でいたい。 大事な人を失う事は、やはり人を魔物に変えてしまう。 けれど、最後の最後に人としての心が残れば美穂や由里、死死森霊子の様にはならない。 私は、最後まで人として、いられるだろうか? ふと、死死森霊子が人を殺す様になったのは何だろう。 そんな疑問が生まれた。 しかし、麻里奈達はまだ知らない。 本当の魔物は、人である事を、何より神をも喰らう生物は人以外にありえない事をまだ知らなかった。
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