葬送花

4/4
前へ
/8ページ
次へ
 私は、フェンスの上に跨って、あの星に手を伸ばす。  でも、やっぱり届かないんだね。  二十二メートルまで登ってきても、やっぱり届かない。  フェンスから勇んで飛び降りると、確かな地面の感触が足に響いてジンジンと唸る。  それと引き換えのように彼の気配は消えて、私はまたひとりぼっちになった。  けれど、今はどこかちょっぴり心強い。  全部君のおかげだよ。私は何もない空間に向かって笑いかける。  そこに彼が今もいる気がしたから。  じゃあ、さよなら。私を救ってくれたひと。  私が、この命よりも大切にしたい存在。  
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加