じゃあ、さよなら

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じゃあ、さよなら

 いざここに立ってみると、恐怖で足がすくんでしまう。足元は幅数十センチ、フェンスから手を離せばすぐにでも風に煽られて転落してしまいそうだ。街の光からは遠く離れ、夜空が鮮明に目に映る。ふと、懐かしさが胸にこみあげてきて、押し出されるように声にならない声が漏れる。あの日もこうやって、邪魔な光の差さない、純粋な夜空を見上げていたっけ。周りには誰もいなくて、一人で泣いていた。潤んだ瞳が満点の空を捉え、徐々に明瞭に見え始めたのをはっきり覚えている。あの時よりも、今は二十メートル程あの星空の近くにいる。
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