そんな黄金のリンゴなんてなくなればいい

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「一つだけ、質問してもいい?」 「なに?」  ふと、疑問に出たことがあって顔を上げる。東君は、特に気にしていないのか、それとも私を信頼してくれているのかわからないけれども、にこにこと変わらない笑顔で首を傾げている。 「どういう人がタイプ? ちなみに私はご飯を美味しそうに食べてくれる人」 「ああ、確かに渡瀬さんってお菓子とか料理とか得意だもんね」  東君の返答に思わず私が驚いた顔になってしまった。彼は私の表情を見て、にこ、と笑う。 「ハロウィンの時に配ってくれたでしょ、カボチャのフィナンシェ」  ソレを聞いて思い出した。去年、クラスは違ったけれども同じ委員会だったとき、ちょうど委員会の日とハロウィンが被ったから、ということで委員会の人たちにカボチャのフィナンシェを配った。 「一生懸命作ったなら、喜んでほしいよね」 「……わ、私の質問に答えてよ。こっちだってちゃんと、答えたんだから」  てっきり忘れていると思っていたことを指摘されるとなんだか恥ずかしくて、つい照れ隠しのように答えをせっついてしまった。  東君は軽く笑ってごめんごめんと言ってから少しだけ考えてから温かな笑顔を浮かべていった。 「笑顔が、陽だまりみたいな人」  その顔は、明確に『誰か』を思い浮かべているのか窓の外を見て、耳を少しだけ赤らめながらも幸せそうなものだった。  こんな顔をするような愛をしているのを、当たり前に受け入れるのが黄金のリンゴみたいな心だと言うのなら、なくなってくれればいいのに。  それが黄金のリンゴ(最も美しいもの)じゃない、普通のリンゴ(当たり前のもの)になってくれたらいいのに。
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