そんな黄金のリンゴなんてなくなればいい

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 朝、学校に来ると黒板を前にみんなざわついていた。なんだろうと思ってみて見るとチョークで色濃く書かれた乱暴な文字で『東祐介はホモ』と書かれていた。 「おはよ」 「渡瀬、見てみろよ。これ」  挨拶をすれば、クラスメートの森本君がにやにやと笑いながら黒板を指さしている。わざわざ指をささなくとも見えているけれど、気にすることはしない。 「まぁ、ホモだろうね」  そう言うと、皆ざわっと大きくどよめく。急に視線が私に集中したかと思うと、みんなが口々に聞いてきた。何処で見たのとか、何で知ってたのとか、そんな知ってどうするんだと言う質問を矢継ぎ早にやってくる。 「だって、ネアンデルタール人じゃないでしょ。ホモサピエンスでしょ」  実際はソレを指しているわけではないのは百も承知だが、私はあえてそう言った。そもそも、私は東君のセクシャリティなんて知らないし興味もない。だが、この黒板に書かれている内容が、東君を中傷するために書かれているのだけはわかった。  そう言うと、皆一瞬だけ静まり返ったかと思うとどっと笑いだした。私が意図的にボケたのを理解しているのか、はたまた天然で言っていると勘違いしているのかは知らないけれども。 「ちげーって、渡瀬! 同性愛だってば!!」 「で?」  心底、興味がなかった。それは、私が東君に興味がないとかそういうものではなく、他人のセクシャリティに関してやいのやいのと騒ぐことに興味がなかった。
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