そんな黄金のリンゴなんてなくなればいい

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「……それでなんで黄金のリンゴなのさ」  休み時間もなんだか気まずい時間ばかりで息が詰まった私は人気のない教室へと入った。  そしたら偶然先客として人目から逃れてきたのだろう東君とはちあわせ、私は特に気にせずお弁当のサンドイッチを食べているときに、あの言葉を東君に言われたのだ。 「俺が同性愛者だって書かれてても、普通に対応してくれた」  私の問いかけに、東君はにこっと笑って嬉しそうに言う。  私は、それに対してふぅん、という短い返事しかできなかった。  彼の言葉が素直なものなら、それは彼にとって同性愛者だと知られたうえで普通な対応を受けることは、とても喜ばしくて、そう思う心が最も美しいと考えたのだろう。  ただ、恋に落ちて愛する対象がこの世界では少数派だっただけなのに。  誰かを心から愛する気持ちは、全て素晴らしいものだと思うのに。 「私は、自分の考えを言っただけだよ。誰が誰を好きだったとしても、本当にその人を愛しているというのなら、それは素晴らしいものだと思うっていう考えを」  もちろん、時々耳にするストーカーという奴らの言い訳に愛とか言っているけれども、それは愛じゃなくって盲目的な恋だ。愛というのは、相手をいつくしむ心があってこそ成り立つもので、自分の欲求だけを満たしてほしい下心しかないのならそれは愛とは呼べない。  でも、東君の様子を見る限りそういう気配はなかった。東君のすべてを知っているわけじゃないからわかることはできないけれども、普段の彼を見ている限りそういう気がした。
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