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恋人との……
脱衣所に移動した二人は、急いで服を脱ぎ、『涼風』のボタンを押してからバスルームに入った。お互いの体を洗い合う余裕なんてないほど、それぞれの性器は硬く勃起していた。
シャワーの下で、尚人は和真に壁まで追い詰められた。顎を左手で押さえられ、優しいキスをすっ飛ばして、和真が無遠慮に舌を入れてくる。尚人は必死になって、彼の舌の動きに応えた。絡めあったそれは、なかなか解けない。執拗に和真が尚人の舌を束縛し、逃げるのを許さないとでもいうように、顔を両手で押さえてきた。口内を犯され、尚人の官能は高まるばかりだった。体の奥が熱い。
長いキスが終わり、唇を解放されたとき、尚人の口からはいやらしい喘ぎが漏れた。
「なお、俺の握って」
耳元で甘く囁かれ、耳孔に舌を差し込まれた。
「あ――」
そこは尚人の弱い場所だった。触られてもいないのに、性器が更に熱くなる。先端から先走りの雫が垂れる。
興奮で痺れる手を、和真の性器に持って行く。そこは完全に勃っていて、熱い。和真も尚人のものを握ってくれて、射精を促すように上下に扱きだした。尚人も手の中の恋人を夢中になって扱き上げる。お互いの息が忙しくなっていく。
「あ――俺、イきそう」
余裕のない色っぽい声が、耳を掠め、尚人の腰は快感で震えた。
「一緒にイこ。なお」
そういって、和真が手の動きを更に激しくする。
「あ――あっ」
尚人は目をぎゅっと閉じた。とたん、暗くなった視界に極彩色の花が散った。
二人は同時に達し、互いの腹部を濡らした。
射精の余韻は長く続き、和真と体を洗い合っていても現実感がなくて、ぼんやりしてしまう。
「気持ちよかった?」
「うん、よかった」
自慰より、和真に触ってもらったほうが何倍も、何十倍も気持ちが良い。和真もそうだったらいいな、と思う。
ボディタオルで体を隅々まで洗われ、洗髪もしてもらう。されるがままになっている自分はちょっと人形っぽい。
泡をすべて洗い流してもらったあと、今度は尚人が、和真の頭を洗ってシャワーを流した。
「和真って、良い体してるよね」
彼の体格はやっぱり良いと思う。筋肉が付いていて弾力がある。
自分より太い首や、広い肩を手でなぞる。
――なんでこんなに筋肉つくんだろ。
素朴な疑問。和真だって平日は仕事で忙しくて筋トレなんてそんなにできないはずだ。休日は一緒にジムに行くけれど。
――それだけでこんな体になるわけないし。
首を傾げると、「それ可愛い」と和真が笑いながら言った。
「え?」
「不思議そうな顔してる」
「あ――あのさ、なんで和真って、こんなに筋肉がついてるんだよ?」
「え? わからない?」
聞き返され、尚人はまた首を傾げた。
「簡単だろ、そんなの」
和真がちょっと呆れたような声を出す。
「なおのお陰だけど」
「俺?」
「ああお前、ほんと可愛い」
バスチェアに座りながら、ぎゅっと抱きしめられる。
「――なおを抱っこしてるから。すごいハードな筋トレになる」
言ったと同時に、両手を脇の下に差し込んでくる。
「あ――ちょっと」
あっという間に、尚人は体を持ち上げられ、起立させられていた。そのままバスルームの隅まで移動し、尚人の背中が壁につく。
和真の顔が近づいてくる。二人はまたキスを始めた。軽く唇を触れ合わせたり、舌を絡めたりと、さっきより余裕のあるキス。チュ、チュ、と音を立てて口を合わせたあと、和真の顔が下がっていった。首筋、鎖骨、乳首と順番に、和真の形の良い唇が触れてくる。
「ん、あ……っ」
軽い接触なのに、いちいち気持ちが良くなって、声が出てしまう。イったばかりなのに、性器がまた兆してくる。そして、いつも恋人を受け入れている場所も疼いてくる。
「あ、和真、早く出ようよ」
自分の声がみっともなく震えた。
尚人の誘いは一蹴される。和真は尚人の足元に跪いて、頭を更に下げていく。
恋人の口に性器を含まれ、腰がびくっと震えた。内股も小刻みに震えてしまう。
熱い粘膜に包まれたそれは、すぐに元気を取り戻し、芯が通り、硬度を増していく。
先端を舌で優しく舐められ、くびれに唇を這わされ、痺れるような快感が体中に渦巻いた。
尚人は息を乱しながら、恋人の顔を見た。目は伏せられている。
「なお」
急に和真が顔を上げた。彼が下唇を舐めた。双眸は、淫蕩な輝きを発している。
顔全体の表情は分らなくても、彼の目は、口は激しい情動を物語っていた。
「なお、ローション取って」
かすれた声で頼まれて、尚人は操られたみたいになって、壁に備わったポケットからローションのボトルを取り、恋人に手渡した。
風呂場にローションが置かれるようになったのはいつ頃からだろう。思い出す余裕もないが。
ゆっくりと、和真の指が後孔に入ってくる。様子を窺うみたいに、粘膜を控えめにかき回し、そっとそっと中へと進んでいく。
尚人は深呼吸を繰り返して、体から力を抜いた。早く中に欲しい。だって恋人の性器も、挿入が可能なほど硬く反りかえっているのだ。
徐々に指が増やされていく。三本の指を根元まで飲み込めるようなって、ようやく和真は次のアクションを取った。彼が立ち上がる。
「後ろ向いて、お尻出して」
有無を言わせないような、強い口調だった。でも尚人は気にしなかった。和真に余裕がないからだ、と分かっている。
従順に、彼の言う通りにする。
タイルの壁に手をつき、尻を突き出して、彼が入ってくるのを待つ。
大きな両手によって、尚人の双丘が広げられる。秘められた場所が空気に触れる。尚人は込み上げてくる羞恥を、どうにか抑え込む。欲しい気持ちの方がずっと強いから。
張り出した先端が、十分解された蕾に触れた。期待と、甘い興奮に襲われ、尚人は喘ぎ声を漏らす。
ぐっと、嵩のある部分に押され、蕾は柔軟に伸び、中へと誘い込むように拡がっていく。
「ひっ……あ」
襞が捲り上げられる感覚に、また尚人は喘いだ。こんなに大きなものを許容できるようになるなんて、と怖くなる。でも、愛おしい人と繋がることができる嬉しさも同時に味わう。
和真の動きは性急だった。一気に奥まで突き進んでくる。圧倒的な存在に腹の中を占領され、自分がくし刺しにされたような感覚に陥る。足腰ががくがくと震えだす。尚人は壁に爪を立てた。
「駄目だって。爪が痛む」
優しい声で窘められ、尚人は頷いた。指の腹を壁に当て、「動いて」と恋人に乞う。
和真の腕が、尚人の腹に回ってくる。もう片方の手で腰を支えられ、尚人は少し楽になった。ホッとした瞬間に、律動が開始される。
深みまで沈み込んでいた恋人の充溢が、ゆっくりと引き抜かれていく感触に、尚人は目を瞑った。排泄感とともに沸き起こる快楽に、唇を噛み締める。そうでもしないと、すぐ達してしまいそうだった。抜けてしまいそうなギリギリのポイントで、また和真が腰を寄せて、尚人の良い場所に先端を当ててくる。そこをぐりぐりと捏ねるようにされ、尚人は声が止めることができなくなった。
規則正しい抽挿に、尚人の腰も連動するように揺れる。
「あ、あ、ん、あ」
緩んだ口からは、恋人の位置が変わる度に、嬌声が飛び出る。
中を擦られて気持ちが良い。前立腺に彼のものが当たる度に、怖いほどの快感に見舞われ、涙が零れる。
限界が近づいてくる。触られていないのに前の性器は硬くなって反り、恋人を咥え込んでいる場所が小刻みに痙攣する。ぐん、と奥の方で和真のものが膨らむ。
「なお、イっていい?」
余裕のない声で問われ、尚人は必死に頷いた。
腰をしっかり手で支え直され、激しい抽挿が五回行われたあと、ひと際深く貫かれた。
「ああっ――あっ……」
内包されていた熱が一気に排出される。先端から白濁が飛び散り、後孔がきゅっと窄まり、中のものを絞り上げてしまう。
「なお」
和真が尚人を呼びながら、最奥で弾けた。
内部で熱い飛沫を感じ、尚人は酩酊した。
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