夏といえば…

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索敵に反応があった。 数は少ないが、すごい速さで接近してくる。 「この忙しいときに!イリス、マノン!何か速いのが近寄って来てるぞ!」 「!?ソーマ!上です!離れてください!」 イリスが叫ぶ。俺が空を見上げると、大きな影が降り掛かってくる。 「うおっ?」 湖の縁からとっさに離れた。影は速度を落とさず湖の中に飛び込んだ。一匹だけじゃない。…5匹はいただろうか。影が飛び込むたびに、大きな飛沫と波が起こった。 「なんだよアレ、…ドラゴンか?」 「ドラゴンではありません。…あれはワイバーンですね。」 「…俺たちを襲いに来たんじゃないのか?」 ワイバーンは湖の中に何度も潜っては顔を出すを繰り返していた。 よく見ると、ワイバーンの口からカエルの足みたいなのがはみ出ている。フロッゲンを食べに来たのだろうか。 「チャンスです、ワイバーンがフロッゲンを食べている間に、私達もクエストを切り上げましょう。…何で剣を構えてるんですか!逃げるんですよ。」 「いや、あのワイバーンも討伐したほうか良いんじゃないのか?」 「何言ってるんですか!1体だけならまだしも、複数いるワイバーンなんて相手になりませんよ!ソーマはどうしてこう常識が欠如してるんですか!行きますよ!」 俺がまだ躊躇していると、ワイバーンの1体がこちらに顔を向けて、凝視してくる。 「やばいですよ!気づかれました…マノン!ソーマをお願い!」 「ふぁいれふー!」 「ちょ、何すんだっておい、嘘だろ!」 イリスに指示されたマノンが俺に寄って来るなり、俺を軽々と担ぎ上げた。 「さぁ撤退しますよ!急ぎましょう!」 「んぐっ……了解なのです!」 「わかった!俺が悪かったから降ろしてくれ!」 マノンは俺を担いだままでも、楽々と走っている。ワイバーンは追って来ない。きっと俺たちが倒したフロッゲンの残骸を食べているのだろう。 何度もお願いしたのだが、リスタントに着くまで、マノンは一度も降ろしてくれなかった。
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