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昔、或るところに一人の女の人が住んでいました。その女の人は醜い者を嫌う差別的な性格をしていたので可愛い子供を授かりたいと切に願っていました。それも毎日のように・・・貪欲ですから。けれども、願えば叶うものじゃありません。況して女の人は独身ですからそんな虫のいい願いは叶う筈はありませんでしたが、どうにも欲望が抑えきれなくなって到頭、魔法使いのおばあさんのところへお願いをしに行きました。
「可愛い子供がどうしても、どうしても欲しいのですが、どうにもならないのです。どうすれば、可愛い子供が出来るのですか?」
「ふっふっふ、お前、男はいるのかい?」
「いないです。」
「馬鹿か、お前は!」
「はあ・・・」
「しかし、男がいなくても出来る方法がある。」
「えっ、そんな方法があるんですか?」
「あると思ったからここへ来たんじゃろがボケ!」
「は、はあ・・・で、難しいんでしょうねえ・・・」
「訳ないことよ。これをごらん、見ての通り一粒の大麦じゃが、そんじょそこらの大麦と思いなさんな。畑にまく麦やニワトリに食べさせる麦とは訳が違うんじゃ。特別な大麦なんじゃよ。これをな、植木鉢の中に植えるのじゃ。すると、何かが起こる筈じゃよ。ふっふっふ。」
「その大麦を私にください。」
「いきなりくださいとは何だね、馬鹿も休み休みに言えってんだよ、何処の商人が只でやるものかね。」
「商人だったんですか?」
「度アホ!例えて言っただけじゃ!何処にこんな商人がおるんじゃ!どう見たって魔女じゃろ!何遍も怒らすな!」
「すいません、で、如何程、いるんでしょうか?」
「銀貨十二枚いるんじゃ。それでもよいのかい?」と魔法使いのおばあさんが尋ねますと、女の人はこくりとうなずいて魔法使いのおばあさんに銀貨十二枚を差し出しました。
魔法使いのおばあさんは例によって、ふっふっふと笑いながら受け取りますと、大麦を女の人の手の中に握らせました。
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