兄の番人 3-2

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兄の番人 3-2

 マンツーマンの練習でたてつづけに三回茅場に抜かれた。それでもぼんやりしているおれに、茅場がなにかあったの? ときいた。 「兄貴のH 見ちゃってさ……」 「胸どうだった? 巨乳?」  茅場をおしのけて松島がきく。松島は動けるデブで、いつもスタメンに入っている。  茅場からパスを受け取って、走りだす。バッシュがするどい音をたてる。ガードする茅場にフェイントをかけて抜かしていく。  とびあがる茅場の両腕をよけてシュートを決める間際に、おれは茅場にだけきこえる声でいった。 「星一と理月がヤってた」  シュートが入った。ネットをこするするどい音とともに、ボールが落ちてくる。  茅場の顔が耳まで赤くなっていた。口元をてのひらで覆って、何それとつぶやく。  列にもどる。先にかえっていた松島がにやにやと笑みをうかべていた。 「で、感想はどうよ? 感じた?」  四角い顔にほそい目。ほそい眉をひそめて松島はおれをうかがっている。 「はやく列にもどれよ、松島」  不機嫌そうに茅場がわりこんでくる。松島が笑っていった。 「スキーで欠員でたらヤバいから、それまで倒れるなよ」  松島はスキー旅行の幹事を引き受けている。おれがわかった、と手をあげると、松島はにらみつける茅場に、おまえもな、といって後列へもどっていった。  茅場は眉間にキリキリと皴をよせていたが、体育館の壁をみて気持ち悪い、とつぶやいた。 「ひとが自分のパンツ穿いてるのもいやなのに」  そこでなんでパンツに話がとぶのかわからない。おれはボールを指でまわしながら適当にうなずいた。
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