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半壊のビルディング
カーテンの端っこがくるくる踊る 春の日
日差しは夏の匂い
こんな日に思うのは 君がいた部屋
今どき扇風機だけ
エアコンの記憶がなかったことに
今さら気づいたんだ 本当に今さら
君との思い出は
ガラスのジャングルジムのよう
そこに見えているのにたどり着けなくて
きゃぴきゃぴ騒いだ頃の
見落としばかりがざわめくよ
昼間にカーテンを引くように
1人になって
淡く頼りない明かりのなかで
君を思う
蓮の葉の浮く池に 近づく夏を思う
一度だって一緒には 見なかった花
カメの池のエサやり
君はひどく生真面目に
見知らぬ人を注意した 僕は黙った
君の心は
まるで半壊のビルディング
どこを支えたって どうにもならなくて
ここぞとばかりに口をひらく
残っている『自分』を確認するように
否定されたなら拗ねたよね
だれもわかってくれない、と言いたげに
いま心のなかは 君への言葉だらけ
もう一度会えたならば 笑い話だけを
年齢の区切りを越えるとき
だれもが周りを見回すよ
そこにいるべき親友を
探すように君は
たびたび問いを投げかけてきた
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