桜の古木は海のいたるところから

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桜の古木は海のいたるところから

 船室の丸窓から見た海は桃色をしていた。節くれだった枝がガラスをかすめ、いつか船底を根がこすらないかと不安になる。  デッキに出る。  桜の古木は海のいたるところから、そのグロテスクに曲がりくねった幹を伸ばしている。海がこれだけ染まってしまうと、カモメも魚をとるのに困るだろう。
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