《絶望の1ヶ月》

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「………ハァ、ハァ…」 意識を取り戻し、再び瞳を開ける。 「……、だれも、いない…」 こわい… 「身体が、いたい…」 こわい… 「おとうさん、おかあさん…」 こわい… 「なんで、ぼくをひとりにするの?」 こわい… 「ねぇ?…だれか…、あいつが来る…助けて…たすけて」 こわい… こわい… 意識が混濁する中、ポツリポツリとつぶやく流季斗…。 心の中は恐怖に押し潰されそうになっていた…。 朦朧とする中、不意に流季斗の耳に、あるはずのない声が聞こえてきた…。 『るきと…』 『流季斗…』 おかあさん…? それはまぎれもなく、母親の声だった… 『逃げて…』 おかあさん…でも、あいつが… 『大丈夫…そこから出て』 おかあさん… ダメだよ、ここを出たら、たくさん叩かれて…苦しくて、息ができなくなる… ぼく、もういやだ… あんなに痛いの… 『大丈夫…おかあさんが守ってあげるから』 おかあさん… 『生きるの…山を降りて、』 いきる…? 『さあ…早く逃げて…こっちよ』 「おかあさん、」 流季斗は朦朧とする中、その母親の声に誘われるようにゆっくり小屋から抜け出す… 足はやせ細り、歩くのもままならないような状態だが、声に導かれるように、裸のまま道無き道をただただ、くだって、生きるために歩き続けた… しかし体力も限界に来ていた流季斗… 川の近くで力尽き、意識を失ってしまったのだった…。
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