宴会

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流れゆく車窓に目を向けている神田は どことなく満足げで 機嫌良さそうに口元に 笑みを浮かべている。 その横顔をチラ見しながら ハンドルを握る真司もまた 口元がゆるゆると緩んでいた。 まあ。嬉しいよな。 やっと自分の居場所に帰れるんだから。 神田はこの四年。必死に勉強しながら 組の仕事も手伝って 寝る間も惜しんで がむしゃらに頑張っていたのは知ってる。 俺はといえば 高嶺兄貴の親友で マトリだった二階堂司さんの手伝いが終わり 組に戻ってから あっという間に多忙になり 結局 戻ったのに この兄弟と一緒に 時間を過ごす事もなかなか出来なかった。 本家見習いで 元兄貴につき 朝から晩まで 行動を共にするようになると 自分の時間なんてほぼ無し。 運転手をたまにさせて貰っていた頃とは 大違いの緊張感。 ボディーガード代わりに 側に居て いつでも弾除けにならないといけない。 兄貴達は殺人的なスケジュールをなんなくこなす。 最初はついて行くだけで精一杯で。。 会合やら会議やらの準備に車の運転。 ドアの開け閉めから 書類の受け渡し 使いっ走りは当たり前。 重要な伝達事項を伝え忘れたり あり得ないヘマをしては 舎弟頭の久家叔父貴に 長時間の説教を喰らう事数知れず。 くったくたになって バタンキューで 泥のように眠り 三つの目覚ましが ギャンギャン鳴る中 必死に布団から這いずり出て また一日が始まる。。 それでも一年もすれば体が自然と動くようになった。 龍兄にはいっぱい助けて貰って。 「俺より飲み込み早いよ。真司は。 体力もあるし 頭の回転も速いしな。だから大丈夫。 そのうち あれ。辛くねーなって思うから。」 二人で ドアの前に立ち ガードをしている時 龍兄は笑いながら そう言って。 そん時は 絶対そんな事あるわけない。って 正直思ってたけど。。 ホントにそうだった。
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