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厨房に飛び込むように入っていった神田の後ろを
ついていくと 神田さん!と声が聞こえる。
中を覗き込むと 神田と矢野さんが
手を握り合い嬉しそうにブンブン振り回していた。
「神田さん!おめでとうございます!」
「矢野さん。どうしたんですか!
仕事忙しいって。。俺 近いうちに挨拶行こうと
思ってたんですよ。」
二人は手を振り回すのを止め
矢野さんは優しく微笑む。
「うまく仕事抜けられたので。
坂田先輩もおめでとうって。伝えろって
言ってました。本当によく頑張りましたね。
色々辛い事も多かったのに。。」
まだ組に入る前 神田は矢野さんの上司の
坂田刑事にかなり世話になったらしい。
矢野さんの労いに 神田はまた涙ぐみ始め
腕で 目をゴシゴシ擦っている。
「あ・・ありがとうございます。。俺。。
矢野さんが居なかったら。ホント。。
卒業出来なかった。。かも。。」
そう言って また涙を零した。
こんなに感情を出す神田も珍しいな。
酒も入ってるからだろうけど。
いつもこう素直ならいいのに。
銀次も神田の様子にビックリして目を丸くし
健太は大きなおにぎりを手に持ったまま
口をポッカリと開け 固まっている。
人の事はわからない。
知ろうとしなければ表面しかわかんねえし。
神田がどれだけ苦しい思いで 頑張っていたのか。
銀次も 今の神田を見て 何か感じたんだろう。
バツの悪そうな顔になっている。
矢野さんは神田にハンカチを渡し
自分も指で涙を拭って
「神田さん。緊張して何も食べてないかと思って。
はい。おにぎり。食べて下さい。
銀次さんも。 佐々木さんもどうぞ。」
矢野さん名物 デカイおにぎりを手渡される。
「・・ありがとう・ございます。
でも。俺 なんか胸がいっぱいで食えないや。」
神田は無理矢理笑みを作り そう言った。
ほら。と神田の目の前に手を出すと
ごめん。と謝っておにぎりを渡す。
皿に乗せて テーブルに置いてやると
神田は矢野さんに向き直り
「矢野さん。ありがとうございます。
後で いただきます。嬉しいです。」
深々と頭を下げた。
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