宴会

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矢野さんが来た事に気づいた舎弟連中が どんどん厨房に集まってきて さながらパニック状態になった。 「楓ちゃん!遅かったね!」 「早く早く あっち行こう!」 「あ!煮物!楓ちゃんの煮物食いたい!」 口々にわめき立て 高嶺兄貴が その人混みを 搔き分けるように中に入ってくる。 「高嶺!邪魔すんな!」 「そうだ!そうだ!」 「いい加減にして下さい。」 高嶺兄貴が 庇うように矢野さんを背後に隠すと 更に大騒ぎになり 怒声が響き渡る。 厨房の壁沿いに神田と逃げ 騒ぎを眺めた。 ホント。ヘタなアイドルより大人気。。 あーあ。 兄貴 髪の毛掴まれて。。 あれ。。 掴んで引っ張ってんの樋口さんだ。。 ひえ〜 揉みくちゃ状態の地獄絵図。 最近 矢野さん忙しいから 庄司さんのとこにも 来てないらしく かなり久しぶりだからってのも あるんだろーけど。 「スゲェな。。」 そう呟くと 神田は楽しそうに騒ぎを眺め うん。と頷く。 「やっと帰ってこれたなって感じがする。」 まあ。そうだろうな。 うちの組らしいっちゃらしい。 神田はこの四年。 この輪の中には入れなかった。 神田と顔を見合わせ くすっと笑う。 「良かったな。」 「うん。」 さて。どうするかな。 そろそろ収拾つけないと。。と考えていると 健太が頬っぺたに米つぶをつけながら 寄ってきて 笑顔を見せる。 コイツは入ったばかりの頃から よく神田に懐いていた。 さっきも一言も発せず 困った表情で 立ち尽くしていたから ただ巻き込まれた だけだったんだろう。 「直兄。お帰りなさい。 俺。初めて矢野さんのおにぎり食いました!」 嬉しそうに そう報告する健太の頭を ポンポンと神田は叩く。 「そっか。美味いだろ。矢野さんのおにぎり。 朝から手伝いありがとな。 銀次も。ごめん。本当にありがとう。」 頭を下げる神田に 健太は はいっ!と満面の笑みを浮かべた。 視線を騒ぎに移しながらまた パクッと おにぎりに齧り付く。 そんな健太を優しい笑顔で見下ろす神田を 銀次は難しい顔をしながらじっと見つめていた。
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