宴会

22/28

2347人が本棚に入れています
本棚に追加
/454ページ
言葉を続けようとすると 銀次は手を止め タオルで拭いて 後ろのテーブルに行き ビニール袋を持つと ほら。と俺に差し出す。 なんだ。 躊躇し 黙っていると 銀次は顔をしかめた。 グイッとまた袋を差し出し 「ほら。矢野さんのおにぎり。皿に置いたヤツと もう一個確保しといたから。デケエから足りるだろ。 それと煮物も少し分けといたからタッパーに 入ってる。せっかく矢野さんが神田の為に 作ってくれたんだから ちゃんと食わせろ。」 え。 ポカンと袋を凝視すると 銀次はイラっとしながら ガニ股で近づいてきて 俺に袋を持たせる。 また流しへ向かい スポンジを持った。 「片付けは俺たちでやっとくから。 神田 見ててやれよ。あの状況で 平気でいられる程 肝座ってねえだろ。 あのインテリはよ。 もっと調子悪くなるかも しんねえから 水も持ってった方がいいぞ。」 ど・・どーゆー心境の変化だよ。 なんか逆に怖い。。 銀次は振り返り ギロッと俺を睨みつける。 「・・なんだよ。」 ああ。 なんだ。 その顔は照れてんのか。 まあ。 銀次らしいな。 くすっと笑うと またギロッと睨まれる。 はいはい。 「わかった。ありがとう。」 袋に水のペットボトルを入れ 踵を返す。 ああ。そうだ。 「銀次。言い忘れてたけどさ。 本家の宴会の手伝い。一番働いた奴は 謝礼の額が他の奴らと全然違う。 焼肉 山ほど食って ロイヤル行っても余るくらい。」 銀次はロイヤルのナンバーワンのキャバ嬢 ミキちゃんにベタ惚れ。 とはいえ俺たち若い衆がおいそれと 行ける店じゃないし 同伴なんて夢のまた夢だ。 ニヤッと笑い そう言うと 銀次は目の色を変え 「バカ真司。おめえ なんでそんな大事な事 黙ってた。馬鹿野郎!」 猛然と洗い物を再開した。
/454ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2347人が本棚に入れています
本棚に追加