宴会

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なんかヨユーぶりやがって。 真司のクセに生意気。 さっき思っていた事を完全に棚に上げ 「ふん。見てろよ。あっという間に追いついて やるからな。」 ビールをひったくりゴクゴクと飲む。 日本酒で疲れていた舌が痺れ なんだか喉がスッとした。 真司はまたニヤニヤ口元を緩め はいはい。と頷く。 「まあ。別に先にも行ってねーけどな。 せいぜい頑張れよ。」 そう言って レンコンを掴み ムシャムシャ食べる。 「この煮物も うめぇ。兄貴はいいよなぁ。。 いつも矢野さんの料理食えて。 優しいし。まあ。怒るとものすごいこえーけど。」 何かを回想するかのように視線を空に彷徨わせ ブルッと体を震わせた。 なんかあったのかな。 難しい顔をしていた銀次が脳裏に浮かぶ。 まあ。ね。 気に入らなかっただろうな。 アイツは入った頃から俺が嫌いで。 真司の金魚のフン呼ばわりされてて。 真司と五分だから俺も兄貴達に目をかけて 貰えてるって きっと思ってる。 まあ。。強ち間違いじゃないかもしれない。 真司と兄弟じゃなかったら 俺なんて。。 煮物をじっと見つめたまま そんな事を考えていると 真司はちろっと俺の顔色を伺い 「ああ。そうだ。」と呟いて ふっと あの笑みを浮かべた。 バカにしてるのとも違う。 どことなく大人っぽい 包み込むような笑顔。 司さんのとこに行ってからかな。。 たまに真司はこうやって笑う。 なんだか気恥ずかしくなるし 意味も無く ドキッとしたりして。。 なんなんだよ。もう。 視線を逸らし 下を向いてビールを飲むと 頭の上から 声がかかった。 「卒業。おめでとう。」 え。 不意を突かれた。 思わず顔を上げると 目の前に真司の顔。 わ。。。 上半身が仰け反る。 「い・・今更。」 急いでソッポを向き ビールに口をつけると 回り込むように顔を覗き込まれた。 「・・何。」 眉を潜め 横目で睨みつけるとニヤッと笑われ 「なんだ。泣かねえのか。」 つまんねえ。と足を投げ出した。 な・・何言ってんの。コイツ。。 「な・・泣くわけないだろ。あれは 酒入ってたし。。びっくりしたから。。」 言い訳を必死に口にすると ポンっと頭を叩かれ クッと笑われる。 「まあ。いーよ。いつか絶対泣かす。」 真司は 俺の手からビールを奪い取り口に運んで 「ああっ。無い。お前。これ最後のビール。。」 缶を振り 中を覗き込んで 数滴 舌に垂らすと はぁ。とため息をついて 天を見上げた。
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