夜空

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「おはようございます。」 直人は 事務所のドアを開け そう言うと パンパンッとクラッカーの鳴る音がして 頭の上に紙テープが降りかかった。 え。。。 シュルシュルと紙テープは回収され 入口を取り囲むように皆さんが立ち 「直人くん!おめでとう!」 割れんばかりの拍手に包まれる。 「あ。。ありがとうございます。」 ペコリと頭を下げると 久保さんが横に来て ポンッと肩を叩かれた。 「直人くん。おめでとう。よく頑張ったね。」 「ありがとうございます。すいません。 ホントは昨日挨拶に来るつもりだったんですけど。」 久保さんは くすっと笑う。 「本家の宴会 楓さん来て なかなか パニックだったって?力弥くんから聞いたけど。」 確かにあれはパニックだったな。。 ため息が止まらなかった高嶺兄貴を思い出し つい苦笑いが出てしまう。 あ。ヤバイ。 急いで取り繕って表情を作ると 伝わってしまったのか 久保さんは ニヤッと口元を緩めて 言葉を続けた。 「皆さんに祝って貰えて良かったね。 卒業前 直人くん心配してたけど 大丈夫だって言っただろう。」 「あ。はい。なんだか申し訳無くて。 でも。せっかく 皆さんに受け入れて貰ったんで また 一から頑張ります。久保さん。皆さん。 これからもよろしくお願いします。」 深々と頭を下げ 顔を上げると 久保さんと正木さんが困ったように眉を下げた。 ん。 何だろう。 あまりこんな表情は今まで見かけた事がない。 「直人くん。ちょっと話しようか。」 他の人たちは仕事に戻り 促されて会議室に入る。 椅子に座り 久保さんと正木さんと相対した。 正木さんは久保さんの大学の同級生で 昔から久保さんと一緒に事業を回している。 久保さんが 当時 仁兄貴がいた分家に 事業立ち上げで行かされていた頃は 先頭で高嶺兄貴を、事務所を支え その手腕は高く評価されていた。 この事務所が柏木組 事業の中心。 不動産売買管理の通常業務の他に 売り上げ管理等の経理業務を始め 契約に纏わる情報収集 新規事業立ち上げに 枝分かれした子会社や ダミー会社の管理まで 全て一手に引き受けている精鋭部隊だ。 数十名で キッチリと回し 取り扱う情報も トップシークレットばかり。 勿論セキュリティーは鉄壁。 ここから最終判断が必要だったり 契約書として完成させる必要がある物が 高嶺兄貴に回り それがデカイ契約に繋がる。 フットワークも軽く 兄貴からの急な要求にも あっという間に応えていく対応力と機動性に 最初からびっくりしっぱなしだった。
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