夜空

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スパンッと包丁でぶった切るように 胡桃さんは言い放った。 腕を組み 仁王立ちで俺を睨んでいる。 俺は視線を外し ふう。。。と深く息を吸い込み 吐き出した。 覚悟してる。って言いながら それが 後ろ向きで覚悟してるんじゃ意味無いって事だな。 きっと それを読まれたんだろう。 一から 頑張って。 影から支えられたら。 自分はそんな器じゃないから。 なんだそれ。 ハッタリでも 真司より早くこの組で のし上がってやる。くらい言える自分でいないと ダメだって言われたんだな。。 ふと昨日の夜 真司にイラっとして 口に出した言葉を思い返す。 「見てろよ。あっという間に追いついて やるからな。」 ああ。そっか。 反射的に言い返したけど。 ちゃんと自分の中には想いがある。 気後れして 予防線張って 自分に言い訳してただけだ。 立ち上がり まだ睨みつけている 胡桃さんを見下ろす。 この人は態度がデカイからここの誰よりも 大きく見えるけど 小柄で多分160センチも無い。 すごいな。胡桃さんは。 この体格で うちの連中 怒鳴り上げてビビらせて。 若い衆の中には 嫌だ嫌だと本気で逃げまくってる 奴らもいる。 その確固たる自信。 揺るぎない態度。 うん。 そうだな。 俺もそうならないと。。 鞄のジッパーを開け 蓋つきの内ポケットに ピンクのUSBを入れ 鞄を閉めて ロックを回す。 重要書類や備品の持ち出しには細心の注意を払う。 鞄は久保さんがくれた ロックがかかり 無理矢理外そうとすると警報が鳴るスグレモノ。 精一杯 余裕を持った笑みを浮かべる。 堂々と。 仮にも俺は柏木組の極道だ。 「わかりました。店貸し切って 見下ろそうが 踏みつけようが 胡桃さんの好きにさせて あげますよ。待ってて下さい。」 はっきりと言い切り ニヤッと微笑む。 胡桃さんはしばらく俺を眺め ニカッと笑うと ポンポンと俺の肩を叩いた。
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