序曲

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そうやって 必至に人との関わりを 最小限にしていた中で 夏目湊は 唯一付き合いやすい奴だった。 成績はトップクラス。 チャラチャラしたガキとは違い 落ち着いていて 柔和。 それでいてサービス精神は旺盛で 誰とでも仲良くなれる社交性。 その上 高身長でイケメンとくれば 勿論 女の子達の注目の的。 湊の周りにはいつも人がワンサカ。 いるんだなぁ。そんな奴本当に。 まあ。俺の周りにはいい男が多いけど ガキの中に居るとは思わなかった。 。。なんて人ごとの様に思っていたら ゼミが一緒になって。 最初はかなり警戒したけど すんなり懐に 潜り込んでくる。 実際に勉強も随分と助けて貰って 大学で唯一まともに会話をする間柄になった。 飄々としてる雰囲気があの人に何処となく似てる。 大人なのに 子供っぽい。 辛い時 助けてくれたあの人に。 それも警戒心が溶けた理由かな。。 とはいえ。 正体をバラせないのは変わらない。 だから プライベートの付き合いは無し。 飯も酒も行った事が無い。 LINEの交換はしたけど 基本自分からはしないし 来ても素っ気なく返すだけ。 「直人さん。手強いなぁ。」 よくそう言って笑われた。 で、今日。 確かに 待ってて。とは言われたけど 湊は人気者だし ハナから式が終わったら 真っ直ぐ帰るつもりだった。 なんて言おうかな。 まあ。もう二度と会わないし 適当にあしらえばいいんだけど。 色々世話にもなったし 最後に失礼な態度 取るのもなんか悪いし。。 せっかくの卒業式に遺恨は残したくない。 うーん。。と内心 悩んでいると しばらく俺の顔を眺めていた湊は くすっと笑みを浮かべ 目を細めた。
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