序曲

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湊と別れ 中庭を抜けると 遠目に校門が見えてくる。 ああ。 もう あの門を抜けて 通ってくる事も無いんだな。 やっとだ。 やっと出られる。 もう二度と戻ってくる事は無い。 また自分の世界で生きていける。 またアイツと肩を並べて進んでいける。 自然と足並みが早くなる。 あと もうちょっと。 その時 グッと腕を掴まれた。 ・・痛いんだけど。 イラっとしながら足を止め 振り返る。 マッチョ系の浅黒男。 センス悪いホストみたいなギラギラスーツ。 家に鏡無いの?って突っ込みたくなる。 って 知り合いのホスト連中はもっとカッコよく スーツを着こなしてるから この比喩は失礼か。 「直人。何 帰ろうとしてんの? ほら。謝恩会行こうぜ。ああ。それとも 二人で抜け出しちゃう?俺は別にそれでもいいけど。 うん。そっちの方がいいな。こないださぁ いい店見つけたんだ。きっと気にいるから行こう。」 もう あと少しで校門だったのに。 恋人気取りで肩を抱かれる。 ホントしつこい。 てめえで稼いだ訳でも無い金 偉そうに 見せびらかす クソガキの典型で名前も覚えてない。 勝手に名前呼び。 全く何様のつもりだろう。 返事もせず 歩き出す。 あの門を抜ければ こんなガキ連中とも サヨナラだ。 「こないだその店行ったらさ。 勧められたワインがマズくて。 なんだよ。これって大声で文句言ったら オーナー 慌てて飛んできて。もっといいワイン持ってきたよ。 親父がよく使う店だから ヤバイって 思ったんじゃね。 何でも言いなりだしさ。」 ゲラゲラ笑い 楽しそうに話し出す。 くだらない。 元兄貴や高嶺兄貴なら絶対にそんな事しない。 あの人なら こんな客 逆にボコボコだ。 肩を抱かれた腕を振りほどきたいのを 必死に我慢し 門の前まで来ると 視線の先に グレーのスーツ姿の男が 一人 立っていた。
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