序曲

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良質な生地に仕立てのいい高級スーツ。 髪はオールバックで 珍しく 細い ブラウンのサングラスをかけている。 悪いけど。 似合わない。 高嶺兄貴にスーツ貰ったって言ってたな。 身長差もあるし 足の長さもだいぶ違うから 裾 かなり詰めたんだろう。 それに。 あんなサングラス 持ってたっけ。 童顔で舐められるって気にしてたから サングラスかける事にしたのかな。 これがまた似合わなくて 笑いそうになる。 高嶺兄貴に憧れてるのはわかるけど タイプ違うんだから。。 校門を出ると ゆっくりこちらに近づいてくる。 隣のガキが ひっ。。と怯んだのがわかった。 まあ。似合ってはないけど それは俺だからそう思うのかも。 場数はコイツも積んでいる。 もともとオーラも持ち合わせてるし シロウトなんて相手にならない。 背はあまり高くないけど 筋肉質で いい身体してるし 腕っぷしには自信がある。 充分 極道としては合格点。 ツカツカと歩いてきて 目の前に立ち クシャッと顔を歪めて 口を開いた。 「遅かったな。」 「ああ。ごめん。って言うか 何 その格好。 お前が卒業したんじゃないんだけど。」 「わかってるよ。朝 本家に顔出したら 鬼頭叔父貴にそんな格好で迎えに行くな。 神田が恥をかくって怒られたんだよ。 それに 最近は俺だってスーツ着る事 あるんだからな。バカにしやがって。」 佐々木真司は 口を尖らせて不貞腐れる。 この兄弟は 若い衆の中で 異例の出世で 本家見習いになり 早四年。 スタート当初 修行の為に 組を離れ その間にかなりの成長を見せ 今では 次期三代目 元兄貴の身の回りの世話から ボディーガードとして 常に行動を共にし 俺たちの世代では 幹部への道に一番近い奴と 目されている。 とはいえ。 俺にしたら あいも変わらず鈍感天然単純バカ。 やっとこれで コイツとまた一緒に組の為に働ける。 それが一番嬉しかった。
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