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「ただいま」  今日は、当直明けで帰宅しているはずなんだけど妙に静かだ。  冷蔵庫に入れておいた食事は済ませてあった。とすると――ああ。今日は、リビングで力尽きたか。 「先生、こんなところで寝てないで、布団に入って下さい」  昨日も引っ切り無しに救急車両が出入りしていたから、走り回っていた事だろう――しかし、変な場所で寝てしまうと後が大変だ。無理やり起こして、布団に連れて行った。身体は俺の方が断然大きいので、ヒョイと担ぎ上げることも可能だ。 「ぅう…ん? あ、おかえり。はる(・・)をありがとう。あすのし、けん……がんば……」  ふかふかの布団の威力に負けた――しばらく起きて来ないだろう。彼が寝ているうちに家事を済ませ、夕食は約束通りデートを兼ねて外食だ。いまさら勉強しても、明日の試験に影響があるとは思えないから、せっかく俺の為に前日を明けにして、試験当日を休みというシフトにしてくれた彼とゆっくり過ごしたい。  本当は、はる(・・)を明日の早朝連れて行き、試験が終わったら迎えに行く予定だったが、両親が『折角だから泊まらせなさい』と言ってくれたので、お言葉に甘えることにした――降って湧いたような久し振りの逢瀬に、はる(・・)ではないが、俺もかなり浮かれている。ごめんな、はる(・・)、今夜だけパパを俺に貸してもらうぜ!
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