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そして、その一方で
「三千子、三千子、いとしい三千子、あなたはすごい力を持った超能力者なんだ」
と、半ばサンボに洗脳のように繰り返し吹き込まれるままに、意識付けされたのである。
その結果が・・
今、彼女の体から立ち上ってきたのである。
”あの泥棒ネコの娘たちを呪い殺しても、それは、正義である”
それは、三千子の確信であった。
”とにかく、なにが何でも東家の丈と卓のよい姉でなくてはならない”
その強固な義務感という以上に”呪縛”から、あのサンボが、救い出してくれたのだ。
”だから、私は、これから自由にやる”それが、三千子の感覚であった。”自由とは、好き勝手をする”のと今の三千子には同義であった。
”にくい相手があれば、罰してもいい。どうせ、自分にはそんな超能力なんかないのだから”
そのときだった・・
時計が、鳴ったのが聞こえた。
入り口にある、アンティークな大時計だ。
ぼ~ん、
ぼ~ん、
ぼ~ん・・・
三つ。
いつもなら、寝入っていれば、それに邪魔されるような音量ではないのだが、冴え渡った三千子の耳には、まるで除夜の鐘の親戚のように鳴り響いたのだった。
かちり・・
それに重なるように、その音が聞こえた。
ありえない、異音。
むろん、ただの空耳と無視することは容易だった。
しかし、あまりに、そのかすかな音に、三千子は戦慄した。
「なに・・」
すうう・・
高層マンションの1フロアが家なのだ。エレベータそのものが、入り口、玄関になる。
「今頃、帰ってきたの、サンちゃん」
神出鬼没のサンボはその超能力で、エレベータを使わないでも、部屋の中へ直行する離れ業を、日常茶飯事で行う。
しかし、だからといって、彼がエレベータを使わない法はないわけで。こっそりと帰ってきた可能性は、否定できない。
しかし、違う・・
だって、今も、サンボは若い娘たちと不埒な真似の真っ最中だからだ。これは、三千子の確信であった。
”では、誰が?”
この高層マンション、当然、そのセキュリティの高さで多くの金持ちが購入しているという定評のあるもので。もし、東京に直下地震があって、都市大停電があったとしても、自家発電によって十分稼動するようになっているのだ。
”では、誰が?”
違和感。
今述べたように、この高層マンションのセキュリティは、下手な銀行の金庫よりも確実なのだ。そんじょそこらの泥棒が簡単に入れるようなシロモノではない。
”・・・・!”
静かな、殺気。害意。
三千子の感覚に触れたのは、それだった。
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