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こいつらの邪悪な思念は、その言葉が嘘でないことを証明している。
「く・・」
三千子は、男たちの視線が集まる胸を隠し、あとずさる。
「いいねえ・・さ、ショウの始まりだ!」
彼女の脳裏には、賊たちが彼女の体で実行しようとするおぞましい行為が、浮かびあがっていた。
「もし、生き延びたら、俺たちの誰かのガキを妊娠しちゃうかもな」
すー・・・・
「?」
その言葉は、三千子の意識を転換する、キーワードだったのは間違いない。それは、彼女の魂を、魂の深いところの何かを、大きく動かした。
「そんなことは、させない」
「む」
「そんなことは、させないといったのよ」
「なかなか勇敢なお姐さんだな。それとも、何か、腕に覚えがあるのかい」
「でも、この人数相手では、有段者でも、そんなもの役に立たねえ」
「下手に抵抗しないほうが身のためだぜ」
「そのほうが、こっちは楽しいがな」
「そういうことではないわ」三千子の目が、完全に据わっていた。
「おう、怖いねえ」
マスクの下で、薄笑いをしながら、男たちが三千子を取り囲み、歩を進めた。「馬鹿め」
「な・・に」
「馬鹿めと言ったのよ、聞こえなかった?」
「逆切れ、かな」
「それはそれで、いじめがいがある」
す・・・
三千子が手を握った。
「?」
「お・・」
ぼっ
その瞬間、男たちのマスクの穴から炎が吹き上がった。
目、鼻、口、耳から。
「ごわあああああああ!」
5人の賊が悲鳴を上げた。
「これは、たまらん!」
そのまま、回れ右して、一目散に駆け出した。
ぶつかり、押し合いへし合い、邪魔者をぶん殴り、壁にぶつかり・・
彼らがパニックになっているのは間違いない。
見ると、彼らの尻や股間からも青白い炎が吹き出ていた。
やがて程なくエレベータが降下していく音が聞こえてきた。
ぱち、ぱち、ぱち・・
拍手。
「?あなたは・・卓、いつのまに。あら、フロイも」
「ども・・散歩がてら、来てみたんだ。あ、あまり細かいことは聞かないでね。説明が面倒くさい。姉さんに万が一のことがないように、見守るつもりでね。しかし、杞憂だったようだね。お見事でした」
「なに、これは・・」
「それが、姉さんの力・・の極く一部」
「信じられない」
「ま、”別の世界”に移動しておいて、信じられないって言わないでよ。まずは、何か、飲ませてよ。フロイにも、何か。姉さんさえよければ、話したいことがあるんだからさ」
うぉおお・・
巨漢の卓に連れられた子牛ほどもあるセントバーナード犬が、いつものよに大あくびをしたが、眠るつもりは微塵もないようだった。
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