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「と、兎に角!!お前達『金食い虫』が黄金のフィナンシェ盗難事件の犯人で間違い無いんだなっ!」
『ねぇでさ』
『美味かったでさ』
『甘くてほろほろ、でもしっとりもったり。――幸せでさぁ』
食べ損ねたスイーツ好き達が、発狂しそうな台詞である。
とりあえず、これはこれで自供を取った事には変わりない。ヤっさんは手元の調書にボールペンを走らせる。
「しかしなぁ・・・何でフィナンシェなんだい?」
フクさんが壁から「どっこいしょ」と体を浮かせて金食い虫達に聞いた。尋問というよりは純粋な疑問から出た問いかけらしい。
「君達は虫だろう?――なら小さな虫だとか、あるいは植物の葉っぱだとかを食べるものなんじゃないのかい。
何でわざわざ人間の食べ物に手を出そうと思ったのか・・・」
フクさんの困り眉がちょいっとだけ跳ねた。そう言えばこの人も甘党だ。あるいは件の洋菓子店に並んでいたのかもしれない。仏のフクさんは、お釈迦様みたいに優しいけれども、怒ると明王様に変わる事だってあるのだ。
『アッシら金食い虫でさ。本来は金を食うのでさ』
『昔、この国は世界で一番金が採れたのでさ。だから以前はアッシらの仲間もたっくさんいたでさ。』
『けんど、金が採れなくなったんでさ。――アッシらが増えすぎて、食い過ぎたせいでさ』
マジか。――ヤっさんは顔を覆った。この国がかつて金鉱脈に恵まれていのは事実だし、今ではその殆どが廃鉱になっている。採り尽くされたからだというのが世間一般の常識だが、現実はもっと生物的理由だったらしい。
というか、名前の通り金を食う虫とは・・・
超高級嗜好というべきか、一種のグルメとでもいうべきか・・・。
フクさんが興味深げに虫達を覗き込んだ。
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