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放課後。
ドベ子と美佳は、桜舞い散る校門をゆっくりと歩み出た。
「はぁ、初日から色々あったわね……。あんたといると、ほんっと退屈しないわ」
美佳は、精いっぱいの嫌味を言ったつもりだった。だが、ドベ子はキョロキョロとあたりを見回していた。
「ねぇ、美佳ちゃん。幸太を待伏せしようよ!」
初日からストーカーをするつもりなのかと、美佳は思った。
「は!? あんた、マジで何言ってんの! これから毎日会えるクラスメートでしょ? いきなりトラブル起こさないでよ!」
「えーーっ! 早く幸太と仲良くしたい! だって幸太は、私がずっと探してた人だもん」
「そのさ、彼は確かにカッコいいし、あんたが一目惚れするのも分かるけど、ずっと探してた人ってのは、無理があるわ」
美佳はドベ子の額を、指先でチョンと小突いた。ドベ子は、にっこりと笑って答えた。
「ううん。幸太は、私がずっと探してた人だよ。十年前に死んじゃったドーベルマンの『ドベちゃん』の記憶と能力を私が引き継いでるの知ってるでしょ? ドベちゃんを優しく撫でてくれた人のニオイが、幸太からするのよ」
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