第一章 ドベ子、なぜか名門校に入学!

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 スマホを取り出し、自撮棒を伸ばして写真を撮ろうとすると、背後からグイと肩を掴まれた。 「ん? このシャンプーと日焼け止めのニオイは、美佳ちゃん!」  振り向くと、ショートカットが似合う小鼻で目のパッチリとした健康的な女子が、両手を腰にして、頬を膨らませて立っていた。その肌は、テニスか何かのスポーツで日焼けしたのか小麦色に艶々としていた。 「ちょっと『ドベ子』! 何やってんのよ。恥ずかしいからやめてって。てか、あんた、また『鼻の力』を『解放』したでしょ! 新学期早々、ダメだって」 「あ、美佳ちゃん! おっはよー! ねえ、桜吹雪をバックに一緒に写メ撮ろ!」  美佳と呼ばれた女子高生は、顔を真っ赤にした。 「あんた、なに呑気なこと言ってんの! 入学式始まるわよ!」 「ん? 美佳ちゃんの朝食、ご飯に納豆、それに焼き海苔だったでしょ? それに今日は仕上げに……、ヨーグルトも飲んできた!」  月姫は、呑気に返事した。美佳はイライラした顔つきで見返した。 「いちいち言わなくて良いっつーの! まったく、曽根崎中で断トツ成績『ドベ』で、嗅覚が『ドーベルマン』並みで、『ドベ子』って呼ばれているあんたが、なんでこの名門に入れるんだか。一芸入試って、ホント謎だわ」  その特異体質から、月姫は小学校の時から、『ドベ子』と呼ばれていたが、当の本人はそんな変なあだ名を、嫌がるでもなく、気に入るでもなく、何となく受け入れていた。
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