第三章 「ベースノート」を嗅ぎ分けろ!

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「みんな、ニオイとかカオリって、どんな意味だか分かる?」 髪の長い真面目そうな女子が手を挙げ、模範的な解答をした。 「様々な物体や液体から発せられ、空中を浮遊している化学分子が、呼吸するときに吸入され、鼻腔に入り、嗅上皮にあるニオイを感ずる特別な細胞、感覚受容膜に吸着されて、脳が感知する現象です」  亜里沙は、感心してウンウンとうなずいた。 「その通り。さすがは青嵐の生徒ね。まあ、一言でいうと化学物質な訳よ、ニオイとかカオリってね。で、良いニオイを『香り』と言い、悪いニオイを『臭い』と言いますね」  人間が、本能的に有益なニオイを嗅ぎ分けて、香りと臭いに区別するという。 「つまり、嗅覚というのは化学の勉強なのよ。だから、こういうイベントも、化学への興味を掻き立てる総合的な学習の一つなの」  もっともらしいことを亜里沙が言うと、生徒たちは「へぇ」「知らなかった」と、好比較的意的に受け止めた。  進学校だが、青嵐高校は自由な校風だった。授業は、生徒たちが学問に興味を持つような内容で、詰め込み式ではない。元々、優秀な生徒が集まっているせいか、みな、自主的に勉強するのが特徴だ。
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