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「だから、みんな。私と勾坂さんが体を張って、化学の奥深さを見せるので、楽しみにしててね」
ウインクして、亜里沙は退室していった。
一時間目は、数学の授業だった。中年の眼鏡をかけた細身の教師が入って来た。
青嵐は、自主を尊重して自由な校風だけに、ドベ子が授業中にぼんやりしていても、居眠りをしていても、先生は何も言わない。
元々アホな生徒には、不向きな校風と言えるだろう。
(ふぁああ、退屈……)
自転車で通える一番近い学校、という理由だけで選んだ。亜里沙の言う通り、嗅覚がずば抜けていることが評価されたという謎の一芸入試によって、市内随一の進学校に入った。
(先生が、何言ってるのか分かんない。日本語じゃないの?)
ふと、美佳と幸太の方を見ると、熱心に授業を聞いている。
(美佳ちゃんも幸太も、あの言葉が分かるんだ。スゲーっ! てか、先生との対決の方法を考えなきゃ)
ドベ子は、少ない知恵を使って考え続けた。
(やっぱり、一番好きなもので勝負する!)
脳裏には、あの食べ物が思い浮かんでいた。
数学の時間は、あっという間に過ぎていった。
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