第三章 「ベースノート」を嗅ぎ分けろ!

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だが、亜里沙はこの程度で怯むようなチキンハートの持ち主ではなかった。 「簡単すぎる問題じゃあ、意味がないわよね。ねえ、勾坂さん。だって、犬並みの嗅覚をお持ちなんですものね」  オホホホと高笑いする亜里沙とは裏腹に、ドベ子は、既に鼻を抑えて顔を引きつらせている。亜里沙は、黒色の小瓶のフタを捻り、試験紙にそれを浸し、ドベ子に手渡した。 「へ、へんへい。わたす、こうふい苦手でふ」  亜里沙はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。 「苦手なものは、克服すればいいのよ。あなたは勉強が苦手だったわよね。正解は、この紙に書いてあるわ」  亜里沙は、審判役の幸太にその手のひらに収まるほどの小さな紙を手渡した。  ドベ子は、顔を苦痛に歪ませながらも、その試験紙のニオイを嗅いだ。 「うっ、くっ……。おぇぇ」  苦しみながらも、ドベ子は鼻パッドをさらに抑えつつ、クンクンと香水のニオイを嗅いだ。
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