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美佳は、ブツブツ言いながら、ドベ子の腕を引っ張って、体育館に連れて行った。
館内は、既に新入生と保護者でいっぱいだった。数百人の若い男女が発するニオイと熱気で、室内はムンムンとしていた。
入るなり、ドベ子は眼鏡の鼻パッドを少し上にあげて、クンクンとニオイを嗅いだ。
「ん? あれ? このニオイ……」
何かを嗅ぎ付けたのか、鼻をヒク付かせながら、そのニオイの発生源をたどっていった。
男女の新入生が、列を成して座っている。ドベ子が鼻の感覚を頼りに歩いていくと、一人の男子高校生が椅子に座って開式を待っていた。
クンクン、クンクン
ドベ子は、ブレザーの制服姿の男子の後ろに座って、首筋のニオイを嗅いでいた。
「ちょ、だ、誰だよ、お前!?」
男子は、目を丸くして振り向いた。耳までかかるライトブラウンの髪に、切れ長の目。小さくまとまった鼻に、引き締まった口元をしていた。
「やっぱりそうだ! こんなところにいたんだ! 会いたかった!」
そう言ってドベ子は、いきなり背後から抱き着いた。
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