第三章 「ベースノート」を嗅ぎ分けろ!

13/19
前へ
/137ページ
次へ
「あんた、精いっぱい考えて、こんなショッパイ問題しか考え付かなかったの!?」 「えっ、えっ? だって、凄く大事なことだよ。どのお店の手羽先かってことは!」 「そういう問題じゃないでしょうが……」  ドベ子が力説すればするほど、クラスにどよめきが走った。 亜里沙が苦笑いをして、弁当箱にポツンと置かれている手羽先を眺めている。 「そうね、大事なことね。ちょっとニオイを嗅いでみるわ」  鼻を近づけてみたが、「うっ」と言って、すぐにそらせた。 「ちょっと、今度は私が苦手かもね。普段、こういうファストフードは食べないから。それにしても、コショウのニオイが強いわね」  ブツブツ言い訳をした。むろん、亜里沙は普段、手羽先などを食べることはない。  またもや、クラスからヤジが飛んだ。 「いい勝負じゃねえのー、先生!」 「お嬢様は、庶民の食べ物を召し上がらない!」  だが、亜里沙の耳には、そんな野次は通じない。 「先生っ、分かった?」  ドベ子がせかすと、亜里沙は意を決したように答えた。 「え? も、もちろんよ。那古野の老舗で有名な、鳳凰坊のでしょ?」  那古野市民なら、誰もが知っている有名店を、何となく言ってみた。  ドベ子は、その答えを聞いて、固まった。 「先生、それで良いの? 本当に良いの? マジで良いの?」 「い、いいわよ」  どこの店がどういう手羽先を出しているか、亜里沙は全く知らない。つまり、本来ならば、正解を導き出すことはできないのだ。 ところが―。
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加