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「あんた、精いっぱい考えて、こんなショッパイ問題しか考え付かなかったの!?」
「えっ、えっ? だって、凄く大事なことだよ。どのお店の手羽先かってことは!」
「そういう問題じゃないでしょうが……」
ドベ子が力説すればするほど、クラスにどよめきが走った。
亜里沙が苦笑いをして、弁当箱にポツンと置かれている手羽先を眺めている。
「そうね、大事なことね。ちょっとニオイを嗅いでみるわ」
鼻を近づけてみたが、「うっ」と言って、すぐにそらせた。
「ちょっと、今度は私が苦手かもね。普段、こういうファストフードは食べないから。それにしても、コショウのニオイが強いわね」
ブツブツ言い訳をした。むろん、亜里沙は普段、手羽先などを食べることはない。
またもや、クラスからヤジが飛んだ。
「いい勝負じゃねえのー、先生!」
「お嬢様は、庶民の食べ物を召し上がらない!」
だが、亜里沙の耳には、そんな野次は通じない。
「先生っ、分かった?」
ドベ子がせかすと、亜里沙は意を決したように答えた。
「え? も、もちろんよ。那古野の老舗で有名な、鳳凰坊のでしょ?」
那古野市民なら、誰もが知っている有名店を、何となく言ってみた。
ドベ子は、その答えを聞いて、固まった。
「先生、それで良いの? 本当に良いの? マジで良いの?」
「い、いいわよ」
どこの店がどういう手羽先を出しているか、亜里沙は全く知らない。つまり、本来ならば、正解を導き出すことはできないのだ。
ところが―。
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