第三章 「ベースノート」を嗅ぎ分けろ!

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 最後の勝負の出題者は、クラス委員の真田幸太である。幸太は、少しも表情を変えることなく、カバンから、透明なビニール袋を取り出した。  亜里沙は不審な眼差しで、それを見た。 「何かしら、それ」 「オレからの問題は、これ。この手袋の持ち主が誰かを当ててほしい」  ジッパー付きの透明なビニール袋の中には、白い手袋が一つ、入っていた。  肩をすくめた亜里沙が、その手袋をじっと見た。 「ちょっと真田君。それ、何かの冗談かしら?」 「いや。オレは真面目だ。もし、本当にこの女に犬並みの嗅覚があるなら、この手袋の持ち主が誰だか、分かるはずなんだ」  幸太は、刺すような鋭い目つきで、ドベ子を見た。ドベ子はエヘヘと笑った。 「いやぁん。幸太にそんなに見つめられたら、照れちゃう。さては、惚れたな!」  ドベ子が幸太にウインクすると、美佳がドベ子の耳を引っ張った。 (馬鹿っ! ふざけてる場合じゃないでしょっ! あの鋭い視線、見なさいよ。真田君は、真剣よ!)  ヘラヘラしているドベ子を、懐疑の眼差しと、警戒の気持ちを含めて、突き刺すような眼光を浴びせている。
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