第三章 「ベースノート」を嗅ぎ分けろ!

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ドベ子と美佳は、ヒソヒソ話を続けた。 (わ、分かったわよ。てか、先生には無理じゃん。警察犬みたいなこと) (真田君は、この勝負を利用して、あんたを試そうとしてんのよ。どんな理由があるか知らないけど、この問題に答えられれば、きっと分かるはずよ) (え! マジで!? 超チャンスじゃん!)  完全に置き去りにされた亜里沙が、不審なものを見る目つきで、そのビニール袋入りの手袋を摘まんだ。 「少し嗅がせて」  袋を開けて、少しその中の空気を吸ったが、亜里沙は眉をひそめるだけだった。 「うーん。かすかに、カビ臭いニオイがするのは分かるけど……。それ以上のことは全く分からないわ」  お手上げ状態の亜里沙を尻目に、ドベ子はビニール袋を受け取り、眼鏡を取り去った。 「全然前が見えないけど、これで私の鼻パワーはマックスよ! 任せて幸太、私、頑張る!」 眼鏡を取ることによって、鼻パッドによる嗅覚の抑制を解放し、ドベ子の嗅覚はマックス達する。  ジッパーを開け、鼻から大きく息を吸い込んだ。 「ドベ子が、いよいよ本気を出したわ」  美佳でさえ、ドベ子が本気で嗅覚の力を解放するところを見たことがなかった。
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