第三章 「ベースノート」を嗅ぎ分けろ!

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幸太は目を丸くして、口を半開きにしている。 「よく、そこまで分かるな……」 「うん。だって、私の鼻はウソ言わないもん。それから、もう一つ。強くて独特のニオイがあるよ」 「それは、なんだ?」 「コーヒー!」  ドベ子の意外な解答に、一年五組は静まり返った。幸太は、カラカラになった口の中から、唾液を絞り出すかのようにゴクリと喉を鳴らし、絞り出すように言った。 「あ、ああ。その通りだ」  おぉぉ  静寂が一瞬のうちに、どよめきに変わった。  幸太が、ドベ子の顔を正面に見据えて言った。 「お前、ドーベルマンの嗅覚を持つっていう噂、本当なんだな?」 「え? 私、勉強はできないけど、ウソはつかないよ」  あっけらかんと、ドベ子が答えると、クラス全員が総立ちになった。 進学校に似合わないオールバックの男子が叫んだ。 「スゲー! 犬女、マジモンなんだ! 『マジでロック』だぜ!」 「いったいどんな鼻してんだよ。ケモノか!?」
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