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「ちょ、いきなり何すんだよ! てか、お前、誰だよ!」
驚いてドベ子を振りほどこうとすると、美佳がドベ子の頭を鷲掴みして引き剥がした。
「だから、やめろって言ってんのよ! 眼鏡のパッドずらして嗅覚解放すんの! それに、あんたの席はこっち」
美佳がドベ子のツインテールを引っ張って、少し離れた女子席に座らせた。その後ろに、美佳は保護者の如く座った。
「うわーん、せっかく良いところだったのにぃ」
美佳は顔面を般若の様に変形させて、ドベ子の耳を引っ張った。
「あんた、アホなのは知ってるけど、始業式でいきなり男の子に抱き着いたらアウトでしょうが!」
美佳がドベ子の耳元で怒鳴ると、ドベ子は情けない声を出した。
「だってぇ。ついに見つけたんだもん。ずっと探してたニオイ。小さな男の子とキンモクセイが合体した香しいニオイ! 絶対にあの人の『臭紋』に間違いないんだもん」
「臭紋ねえ。指紋と同じで、人間にも固有のニオイ『臭紋』があるってヤツでしょ。てかさ、あんた、あの人が誰だか知ってんの?」
「知らなーい。でも、知ってる!」
ドベ子が自信満々に言うと、美佳は、「はぁ」と深いため息をついた。
「てか、あんたの言うこと、いつも訳が分かんないけど、今日は特に分かんないわ」
「だって、ホントのことだもん。初めて会った人だけど、懐かしいニオイのする人だもん。だから、知ってる人! 私の頭の中で、臭紋がピッタンコ!」
常人には到底理解不能なことを、ドベ子は言った。
「はいはい。臭紋なんて、あんた以外にはケモノしか分かんないんだから。しかも、初対面の人のニオイを知ってるとか、あり得ないっしょ」
ドベ子は両手をグーにして、思い切り主張した。
「あり得るって。きっとあの人は、私にこの能力をくれた『ドベちゃん』を可愛がってくれた人だから!」
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