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第四章 美男と野獣
西に沈みゆく赤黒い陽の光が差し込む一年五組の教室には、ドベ子と美佳、それに幸太と担任の亜里沙が残っていた。
「みんなの前では強がったけど、私の完敗だわ。人類で一番の嗅覚は、伊達じゃないわね。信じられないけど、信じちゃうわ。私の父は耳鼻科の医者で、ニオイの研究をしているの。だから一度、あなたを診てもらいたいわ」
「え? 誰に何を見せるの? 私の鼻の穴?」
「そうね、あなたの驚異的な嗅覚を、科学的に検査、検証してみたらどうかと思ったのよ」
ドベ子は、急に頬を赤らめ、イヤイヤと首を振った。
「ヤダ! 怖い!」
美佳は「うむうむ」とうなずいた。
「別に怖くないでしょ。いい機会だから、診てもらったら? あんたの鼻は異常なんだから。それがはっきりすれば、すっきりするじゃない」
亜里沙の父は那古野大学医学部付属病院の耳鼻科の医者で、嗅覚についても深く研究をしているという。
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