第四章 美男と野獣

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「えっ? 付き合ってって、ホント!?」 ドベ子は、口をアングリと開けて驚いた。 「いいよ、私、いま彼氏いないから! 彼女になってあげる! やったー!」  そのまま万歳をして、意味もなく教室中を走り回った。 美佳は、顎が抜けんばかりに驚いた。 「ちょ、マジで? 那古野で一番の秀才と呼ばれた真田君が、那古野で一番のお馬鹿なドベ子を彼女にって。美女と野獣ならぬ、美男と野獣だわ」  ドベ子は、阿波踊りとサンバをミックスしたような奇妙な踊りで体をくねくねさせながら、机と椅子の間を、文字通り狂喜乱舞している。 だが、幸太は冷静に、しかもゆっくりと首を振った。 「は? いや、付き合ってくれの意味が違う。勝手に喜んでもらっても困る」  ドベ子の暴走が、止まった。 「え?」 「少し、話したい事があるだけだ。お前、うどん好きか?」 「うどん? ふつーかな? でも、うどんよりも、手羽先がいい!」  幸太はドベ子の的外れな返事を当然の如くスルーした。 「いや、うどんにしてくれ。学校の近くに、『小次郎長命うどん』という店がある。後で、そこに来てくれ。じゃあな」  それだけ言って、幸太はカバンを担いで出て行った。
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