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美佳はコメカミをピクピクさせて、ドベ子の頬っぺたをつねった。
「あの人はね、若葉中の秀才で、青嵐にも断トツでトップ入学した真田幸太(さなだ・こうた)君よ。あんたみたいな断トツでドベのお馬鹿な子と釣り合う相手じゃないのよ!」
名前を聞いたドベ子は、ニヤリとした。
「そうかぁ、幸太って言うんだ。いい名前だねぇ。とりあえず、写メ撮ろっ」
スマホを取り出そうとすると、ついに美佳はブチ切れた。
顔を真っ赤にして立ち上がり、両手でツインテールを引っ張り上げた。
「ちょっと! あんたいい加減に……」
怒声を浴びせようとした、その時。館内にドでかい声が響いた。
「いい加減にするのは、お前だ!」
「え? わ、わたし?」
「そうだ! 髪の短い女子! 一年五組の新入生!」
演台から、生徒指導主任のマッチョな教師が、美佳を指して言った。
美佳は、しょぼくれて座った。
(ちょっと、あんたのせいで怒られちゃったじゃないの!)
(アハハ、ゴメーン!)
(くーっ、中学卒業したら、あんたのお守からも卒業できると思ったのに!)
演台では、教頭、校長の挨拶、PTA会長らの祝辞が続いていた。だが、ドベ子の頭の中は、少し離れて座る幸太のことでいっぱいだった。
(あの人のニオイ。私が飼っていたドーベルマンのドベちゃんが教えてくれた、あの人と同じニオイ)
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