第七章 「御堂信孝」と「幸太のパパ」

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 「だ、大丈夫だ。痛くしないから。鼻の内側をほんの少し、こするだけだから」 「勾坂さん、お願いよ。あなたの驚異的な嗅覚を解明することは、人類にとっても有益なことなの。あなた、人類に対して役に立てるのよ。痛くしないから、ね」  亜里沙の強引な理屈は、普通の人間には通じなくとも、ドベ子には意外にも通じた。 「マジで! 先生、こんな私が、人類の役に立つの? じゃあ、良いよ!」  ドベ子はあっさりOKした。検査用の椅子に座ると、御堂がその隣に座った。  御堂はドベ子の鼻の穴を「鼻鏡」という道具を使って覗き込んだのち、「鼻咽腔ファイバー」という先端が細く、自由に曲がる道具をドベ子の鼻の穴に差し込んだ。 「い、痛いっ!」  ドベ子は暴れようとしたが、看護師が押さえ込んだ。 「暴れると、余計痛いですからね、大人しくしてね」  痛がるドベ子を無視して、御堂は検査を続けた。
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