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「だ、大丈夫だ。痛くしないから。鼻の内側をほんの少し、こするだけだから」
「勾坂さん、お願いよ。あなたの驚異的な嗅覚を解明することは、人類にとっても有益なことなの。あなた、人類に対して役に立てるのよ。痛くしないから、ね」
亜里沙の強引な理屈は、普通の人間には通じなくとも、ドベ子には意外にも通じた。
「マジで! 先生、こんな私が、人類の役に立つの? じゃあ、良いよ!」
ドベ子はあっさりOKした。検査用の椅子に座ると、御堂がその隣に座った。
御堂はドベ子の鼻の穴を「鼻鏡」という道具を使って覗き込んだのち、「鼻咽腔ファイバー」という先端が細く、自由に曲がる道具をドベ子の鼻の穴に差し込んだ。
「い、痛いっ!」
ドベ子は暴れようとしたが、看護師が押さえ込んだ。
「暴れると、余計痛いですからね、大人しくしてね」
痛がるドベ子を無視して、御堂は検査を続けた。
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