ドベ子の鼻は、欺けない！

第七章 「御堂信孝」と「幸太のパパ」

亜里沙と三人は、ベンツに乗り込んだ。既に、夕暮れが迫ってきていた。車内の空気は、重かった。夕暮れ時だというのにサングラスをした亜里沙が、静寂を打ち破るように口を開いた。
「勾坂さんの言うことが、もし事実だとしたら、真田君は辛い思いをするかもね」
　亜里沙は、父の臓器提供者が誰であろうが、あまり関心がないようだった。
「いやぁ、でもさ、先生。考えようによっちゃあ、先生のオヤジさんの中で、真田のオヤジは生きてたってことで」
　巧は楽天家で、いつも難しい顔をしている幸太とは正反対の性格だ。
「それとこれとは、別の話じゃない？　だって、人間って、体があって、心があって、それで、笑ったり泣いたりして、誰かを好きになったり」
　隣に、意中の相手がいるせいか、美佳はそんなことを口走った。